(16) おふくろの味(2) ライスカレー 実をいうと五目飯がどこまで文字どおりの「おふくろの味」だったのか、ちょっと自信がない。おふくろの傍には、家のことなら何でも出来るしっかり者の祖母がついていたから、ほとんど「祖母の味」だったと思われる。もっとも「おふくろの味」とは、もともとそういう性格のものだろう。その家に、代々受けつがれて来た味こそ「おふくろの味」であるに違いない。
話はそれるが、これも日本の食の歴史にかかわることだから、ぜひ書き残しておきたいことがある。それは祖母の「四つ足」の定義は、今のわれわれが考えるところとは違い、ウサギだけは例外だった事実である。兎は鶏の一種で、その証拠に兎は一羽、二羽と数える、というのである。確かにウサギ肉は鶏に近いさっぱりした味ではあったが、足はもちろん4本ついていた。 だからわが家のライスカレーは二村家に伝わった味ではなく、母が実家から持ち込んだものだった。母の父は、玄米食普及のために、しばしば試食会を開いている。そのメニューのひとつがライスカレーだったのである。もちろん、今のように出来合いのルーで作るものではない。豚こま、ジャガイモ、人参、玉葱などを炒めて煮込み、小麦粉でとろみをつけ、カレー粉で味を付けた、ごく普通のものだった。リンゴと蜂蜜の入ったカレーライスがあるなどとは、コマーシャルソングで教えられるまで、想像もしていなかった。もっとも、今ではヨーグルトを使ったり、チャトネーを入れたりと、いろいろ新しい味を試みているが。 |
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