(5) 和風チューインガム
人が何か口にするのは、お腹が空くから、というだけではない。口さみしいから何か食べることがけっこう多い。とりわけ、離乳期の幼児は口さみしいものらしい。別にお腹が空いていなくても、なにか唇にふれていないと安心できない。そこで指をしゃぶり、オモチャでもなんでも手に触れるもの、口に入るものを何でもしゃぶる。わが家の娘も赤ん坊の頃はかなりの〈口さみしがりや〉で、すぐ右手の親指をしゃぶり、〈しゃぶりダコ〉ができたほどであった。
ずいぶんともってまわった前置きになってしまったが、ここで作り方を説明しよう。材料は竹の皮と梅漬けの紫蘇である。こう書くと「ははーん」と思われる方も少なくないと思う。戦前は、かなり一般的な〈おやつ〉だった。竹の皮は、食品などの包装に日常的に使われていたし、どこの家にも自家製の梅漬けがあった。竹の皮も最近ではあまり見かけないが、タケノコの皮、中華チマキなどに使われているものと言えば分かっていただけるだろう。 「梅干し」でなく、「梅漬け」と書いたのには理由がある。それはわが家には長い間〈梅干し〉はなかったからである。あの柔らかく箸でちぎれる〈梅干し〉は、私の周囲では一般的ではなかった。どこの家もパリパリした〈梅漬け〉だった。「土用干し」をして柔らかくなった〈梅干し〉の旨さを知ったのは、ずいぶん後のことだった。いまでは〈梅漬け〉を食べたいと思っても、〈梅干し〉しか売っていない。もっとも小梅ならまだ〈梅漬け〉もあるようだが。今でも時々、あのパリパリした〈梅漬け〉を食べたいと思うことがある。もっとも、梅をそのままかじるより、種をとって実を細かく刻んで食べるのが普通だった。これに砂糖をまぶせば、おやつになった。旅館などで朝、食事の前にお茶といっしょに出してくれるところがあったが、今はどうだろう。 |
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