高野房太郎より高野岩三郎宛書簡(1891年3月10日付)
三月十日
房太郎
岩三郎殿
先便ニハ出帆日ヲ取違ヘ遂ニ出状不致候ヒシ
別紙為替証之通リ先月分送金仕候間
御入手相成度候大ニ延引相済不申候今月分
ハ何トカ都合仕リ本月中ニ相送リ可申候
学校ヘハ日々通学致居候今日迄ニ已ニ二回
月課ノ報告ヲ受取リ候ガ先ズ上出来ノ方ニ
御座候当地ノ学校ニテハ凡テ Report Card ナル者
有之リテ毎月月末ニ各課目ノ優劣ヲ記シ生徒父
弟ノ閲ニ供シ候生徒ハ之ヲ父母ニ見セ其ノ記名ヲ得テ
再ビ学校ヘ持帰リ候 課目中ニ格別是ト申ス
難義之者ハ無之候得共時々 Lady of Lake
ノ文法解シャクニハ閉口致シ候
当時ハ先ヅ万事好都合ニ有之学校ヘノ通学差
支ヘ無之夕七時ヨリ后十二時迄先頃出来セル日
本人ノ料理店ノ給仕ヲ致シ居仕リ候「スクール、ボーイ」ヲ
為シ居ルトハ違ヒ給料ハ御地送金ヲ引去キ尚幾
分カ余リ出有之存候乍去非常ノ段故余リ
長持ハ覚束ナク候
先ツ頃一ヶ月計リ無業ノ節日本人ノ下宿ヤヘ宿
リ居リ夜間薄暗キ燈下ニテ勉強致候為大ニ眼
力ヲ弱メ学校ニテ速記法ノ勉強ニ差支ル事モ有
之候ガ為メ料理店ノ夜分奉公致ス事ニ致候
其后ハ平ニ復シ居リ候乍去御都合被下リテ精リ
水二三瓶御買求御送被下間敷哉又ノ遣リ損ヒ
ノ用ニ備ヘ可申候故
学務ニ繁忙ナル為メ禄々日本ノ新聞ヲモ読ム暇
無之御閑暇ノ
節ハ時事ノ重要ナル出来事ハ紙面ヘ書込ヲ乞フ
右申上度候匆々
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