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高野房太郎より高野岩三郎宛書簡(1891年10月20日付)

 九月廿四日付之御手紙正ニ入手仕候小生之眼病ニ就テ不一方御心配相掛ケ
恐縮々々小生モ一時ハ驚キ入リ候全癒ニハアラザルモ医師ノ手ヲ離レ候故
今后ハ可成塵芥ノ眼中ニ入ラサル事ヲ勉ムルノミニ候医師ハ桑港ノ不可ヲ説
イテ日本ニ帰ルベシト云ヘドモ是ハ小生ノ容易ニ頷カサル所ニ候
明年五月卒業ノ上ハ如何ニスベキヤトハ頃日切リニ小生ノ脳中ニ浮ビ出ヅル
問題ニ候未タ何ノ決心スル所モ無之候得共貴地ノ都合ニ依リテハ一大果
断相行ヒ申度已ニ此国ニ来リテヨリ五年余何カ為ス処ナクテハ不叶候乍去御地
之責任ハ常ニ小生ヲ制シテ運動ヲ自由ナラシメズ望ム所ハ貴弟ヲシテ一度内職
ノ口ヲ得ラレテ以テ小生ヲシテ暫ラク無責任ノ地位ニ立タシメラレン事ヲ乍去此ノ如
キ事ハ計画ノ充分ナラザルニ於テハ為ス事ヲ敢テセザル次第故御地ノ都合
充分ニ整ヒシ上何トカ決心モ可致一度帰朝スルカ左ナクバ東部諸州ニ
出張スルカ南米墨西哥若クバ船乗リ何レトモ決断可致次第ニ御座候就
イテ伺ヒ度キハ貴弟ニシテ若シ内職ノ口ヲ得ラレナバ母上ノ生計ヲ立ツル
ニハ差支ナキ者ナルア又ハ依然小生ノ送金ヲ要スル事ニ候哉無論小生ノ
責任トシテ送金ノ義務ヲ免レントスル義ニハ無之候得共心得ノ為メニ
伺ヒ置度キ次第ニ候
小生ノ学務ハ非常ニ繁忙ニ候別紙ハ毎月末(去七月ヨリ去月迄ノ)ノ成績
表ニ御座候御一覧被下度
不取敢右迄匆々
    十月廿日
              房太郎
  岩三郎殿

【冒頭欄外】尚ホ前便ノ為替ハ無事御入手被下候哉彼カ如キ間違ハ必ズ再ビ致ス間敷候故御用捨ヽヽヽ





 コスモポリタン・ホテル用箋・封筒使用。日本東京本郷区駒込千駄木林町百八十番地 高野岩三郎宛。 サンフランシスコ商業学校ノ通信簿の写し同封。

                             




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