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高野房太郎より高野岩三郎宛書簡(1891年12月9日付)

十一月十九日出之御紙面ハ正ニ拝見仕候別紙之通リ〔先日の2字抹消〕十弗送金
仕候間御入手被下度実ハ今月ハ些少増額相送可申心得居候処
奉公先給料未ダ相渡シ呉レス候為此義モ不相叶候ヒシ当便ノ如ク
出帆両三日前為替取組度ト存シ両三度金円受取ニ出張致候得共
常々先方不在等ニテ漸ク本日受取為替取組候次第ニ有之尤モ郵
便局役員ヘ問合候処明日ノ汽船ニテ送ルト申候
チャイナ号乗組ボーイ安吉氏ヘ過日面会糸やノ様子ハ委細聞及候
仝人ヘ高尾秀太郎殿ヨリ書面依頼被致尚小生ヨリ金子取立ノ
委任状抔モ仝人ヘ相渡有之候ヒシ小生ハ右安吉氏ヘ事情委細申述置候
尚且東京表ニ催促状差出ノ事ハ厳重同人ヘ談シ呉レト申置候何
レ次便当リニテ仝人ヘ書面可差出候
卒業後ノ方向ハ未タ判然不致候過日一友「タコマ」ヨリ来リ切リニ仝所ヘ帰
リ来ラン事ヲ勧メ候或ハ仝所ヘ罷越ヤモ難計候小生ハ力ノ及ブ限リハ御地之
方ヲ都合能ク取運致度トハ存候得共何ト申スモ遠ク離レ居ル事ナレバ思フ
様ニモ不参我日本ニアラバト考ヘル事モ度々ニ候
御申越ノ日記ハ早速買求次便ニテ差送可申候
是度ノ大地震小生モ当地ニテ義捐金募集ノ挙アルヲ以テ何程ナリトモ差出
サンカト存候得共大蔵省ノ都合仲々ニ思敷カラズ遂ニ打過候
貴弟ハ「デツキンス」ノ小説御一読相成候事有之哉若シ未タ御読無之候ハ ヾ御送可申候乍去小生ノ持チ居ルハ大部多額ナレバ運送等ノ都合悪敷
急ニハ送附不相叶間敷候得共友人ノ帰朝スル者アル節委託可致候
右迄匆々
  十二月九日夜
                                   房太郎

  岩三郎殿



 日本東京府本郷区駒込千駄木林町百八十番地 高野岩三郎宛。 10ドルの国際郵便小為替同封。

                             




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