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高野房太郎より高野岩三郎宛書簡(1892年5月6日付)

 四月十二日出ノ御貴書及新聞正ニ入手仕候。
先便ニテ申上シ通リ読売新聞ハ御地友人原氏ヨリ郵便送附
致呉候故御都合ニテ送附取止メ国民之友ヲ以テ之ニ代ヘ
被下候ハバ幸甚。
城常太郎氏ハ定メテ御宅ヘ伺フ事ト存候。仝氏ニハ「ヂッケンス」ノ
小説六冊依頼致有之バ、御受取被下度、且先般庄司
氏帰朝ノ節依頼致シ候書籍ハ受取相成リシヤ否ヤ。
尚同氏再航ノ節御依頼ノ菓子ハ正ニ入手仕候。母上ガ
特ニ小生ノ大好物ノ菓子ヲ撰ミテ送リ玉ハリシハ小生
ノ深く感謝スル処ニ御座候。
経済原論ハ次便御送被下トノ事日々着船ヲ待居候。
前便申上候通リ、貴弟大学入校之費用ハ一切小生ニ於テ
負担可仕故決シテ御心配有之間敷、日本金ニテ五十円
来八月中ニ送附可致故他ヨリ借入等之事ハ一切仕為
間敷候。従ツテ長崎地方ヘ御旅行ノ事モ不用ト存候。併し
他ニ御見込モ有之候哉。此点ニ就テハ一ニ貴弟ノ決心ニ任セ
可申候。
亡叔父上ノ七年期〔忌〕不知々々ニ打過申候。小生等ノノ責任ハ
貴弟ト仝感ニ候得共、之ヲ尽スノ困難ハ一層小生ニ於テ
其堅キヲ感候。乍去、何レノ時カ之ヲ充タスノ道ナカラザラン。
唯熱心以テ事ニ当ルベキノミ。
本月分ノ送金ハ本月末送附可仕候。
不相変無事労働致居候故、御休神有之度候。
本年ニ入リテハ兎角御不快ノ由、随分御注意アラン事ヲ
望候。
不取敢右迄。 匆々
 五月六日
                     房太郎
                  1317 C. St.,
                  Tacoma, Wash.
岩三郎殿

頃日新聞紙上ニテ左ノ一詩ヲ得タリ(別紙ニ続ク)      


コスモポリタン・ホテルの封筒使用。
1892年5月7日午後3時半、タコマ局消印。
表書きはつぎの通り。
「日本東京本郷区駒込千駄木林町百八十番地 高野岩三郎殿」

                             



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