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《編集雑記》23 (2014年1月〜 )

年頭のごあいさつ






近況報告

《森鴎外研究関連サイト・リンク集》の制作とアクセス解析

まずは、ご無沙汰のお詫びと言い訳を兼ねた近況報告です。
 この2月に、なんと80歳の大台に達しました。ところが、その誕生日の前後数ヵ月間は、いささか体調不良で、《編集雑記》の執筆はおろか、あちこちに不義理を重ねる始末となりました。前半は風邪がなかなか治らず、後半は雪かき後の筋肉痛の処置を誤って、歩行困難になってしまったのです。この間、出なければならない会合も欠席し、ご著書をいただいても礼状を書かず、文字通りの欠礼続きでした。老化による体力・気力・抵抗力の衰えは、逃れようのない現実です。
 ようやく5月に入って、いくらか元気が出て来ました。とはいえ、病院と図書館に出かけるほかは、ほとんど家に閉じこもっております。この間の変化はといえば、携帯電話を持たされたことでしょう。前から言われていたのですが、「無用の長物」だと抵抗してきました。ほとんど外出しない身には、携帯よりパソコンの方がずっと実用的だからです。しかし、体調不良を機に、万一の連絡用と観念して、購入しました。スマホも考えましたが、使い勝手の良さから〈ガラパゴス携帯〉にしました。簡単・楽々の初心者向けガラケーとはいえ、けっこう多機能である上、ボタンの操作が複雑で、まだとても使いこなせていません。電話は予想どおり、掛けもせず、かかっても来ず、写真をとるならカメラを使うというわけで、使っているのはスケジュール帳と歩数計だけです。スケジュール帳は、図書館の本の貸出し期限日を知らせてくれたり、病院の予約日を教えてくれるなど、なかなか便利です。万一の連絡用ですから、寝るとき以外は身につけており、したがって歩数計もそれなりに役立っています。新発見は、わたしの通常の暮らし方だと、1日1,000歩を超えない事実でした。そこで、最近は、近所の図書館に行くにも少し遠回りをして、なるべく1日3,000歩は歩くよう心掛けています。

 すこし元気になって始めたのは、かつて在籍した旧制諏訪中学の同期の友人・林尚孝氏のホームページ制作です。彼は農業機械の研究者ですが、後輩の小平克氏とともに、この十余年、森鴎外研究に力を入れています。その中心的なテーマは、鴎外の処女作「舞姫」をめぐるいくつかの謎の解明です。すでに2005年4月には、『仮面の人・森鴎外 ─ 「エリーゼ来日」三日間の謎』という著書を同時代社から刊行し、『朝日新聞』年末の「書評委員お勧め〈今年の3点〉」にも選ばれました。選者は、元朝日新聞社論説主幹の佐柄木俊郎氏ですが、「文献調査は確かで説得力がある」と評しています。林尚孝は森鷗外記念会にも入会し、その後の研究成果を、機関誌『鷗外』や『記念会通信』に寄稿し、その総数は26点に達しました。講演記録4点をふくめ30点を、ホームページで公開するというので、ウェブサイト構築に力を貸した次第です。《森鴎外と舞姫事件研究》という名称です。「どんなタイプのサイトを希望するのか」と聞いたところ、かたじけなくも《二村一夫著作集》だというので、ご要望に応じたしだい。背景に使った写真は、森鴎外の「森」であり、その森に迷い込んだ著者・林尚孝の「林」とも見えるものです。制作の参考にと、あちこち鴎外関連のサイトを見てまわったのですが、リンク集に良いものがないので、それではと思い立って、《森鴎外研究関連サイトリンク集》も制作しました。このリンク集の一番のセールス・ポイントは「インターネット上で読める森鴎外研究論文等」です。CiNiiを主に、430点もの研究論文にリンクしています。私の20年近いリンク集制作〔参照「リンク集のこと」など〕のノウハウを駆使し、時間をかけた作品です。ご一覧いただければ幸いです。

  このホームページ制作の副産物は、「アクセス解析サービス」の発見でした。カウンターが欲しいという林氏の要望で、いろいろ調べたところ、今はもう「アクセス・カウンター」の時代ではなく、サイトの閲覧状況を詳しく分析してくれる「アクセス解析」が良いと知りました。そこで、《森鴎外と舞姫事件》だけでなく、《二村一夫著作集》にもアクセス解析を導入し、1週間前から稼働しています。それで分かったことは、我がサイトへ、いまだに多くの読者が立ち寄られている事実でした。ここ何年間もあまり更新せず、トップページに置いてあるカウンターの増え方も少ないので、いまや見捨てられたサイトになっていると思い込んでいました。しかし現実には、検索システムの発展で、トップページを経由せず、直接、見たいファイルに飛び込んで来る方が圧倒的多数になっていたのです。昨日、7月10日を例にとると、総数105のビジターのうち、トップページを経由されたのは僅か9人でした。これに続く 〈ランディングページ〉〔と言うのだそうです〕は、『足尾暴動の史的分析』の冒頭部分8、「企業別組合の歴史的背景」5、「大原社会問題研究所を創った人びと4、'The Formation of Japanese Labor Movement'3の順序です。驚いたのは、予想以上に海外からのアクセスが多く、しかも思いもかけない国や地域からの訪問者がいたことでした。どうやら、主要論文の多くを英訳して載せているのが寄与しているようです。アクセス解析開始から、ちょうど1週間の訪問者総数458のうち、外国からは、アメリカ33、オーストラリア7、韓国5、フィリピン2、アラブ首長国連邦、オーストリア、ベルギー、スペイン、香港、セルビア、台湾各1の合計11カ国からの54ビジターでした。つまり11.8%が海外からだったのです。インターネットがグローバルなネットワークであることを、改めて認識させられました。なおこのビジター数は、1日に複数回アクセスされる方がいても、1日1回しかカウントされないので、カウンターよりはるかに信頼度が高いと言えるでしょう。どのページが良く読まれているかも分かります。やはり本筋の労働史関連文献が主ですが、それと同時に「食の自分史」の読者も多く、とりわけ、8年前に胃癌の手術をした際の病院食について全国各地からアクセスされています。それもスマホを使っている方が多いのにビックリしました。iPadは想定内でしたが、まさか携帯電話で、論文中心のわがサイトを訪問される方がおられようとは、思いもかけない「発見」でした。
【2014年7月11日記】




英語版の改訂増補

 連日の猛暑に加え、各地で台風や集中豪雨で、災害も多発した夏でしたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。お見舞い申し上げます。関東では、この1週間ほど気温がさがり、だいぶしのぎやすくなりました。
  この夏は、ひさしぶりに、本著作集の更新にかなりの力を入れました。といっても、「What's New」をご覧いただけばわかるように、大半は英文ファイルの訂正増補ですから、日本語版読者のお役にたつような更新ではありません。
   長いあいだ怠けてきた英文ファイルの増補を思い立ったのは、7月初めに本サイトへ導入した「アクセス解析」の影響です。思いがけず世界中から、それも予想外の国や地域からも、毎日かなりの数のアクセスがあることを知って、励まされたからでした。そこで、すでに掲載ずみの英文ファイルの文章をあちこち手直ししたり、中断してきた英文論稿の html化作業をすすめ、一気に掲載しました。この1ヵ月半ほどで、総計11本、毎週平均2本足らず、追加掲載しました。具体的には、『足尾暴動の史的分析 ─ 鉱山労働者の社会史』で、デューク大学出版部から出した英語版には収録できなかった、〈第2章補論1〉「飯場頭の出自と労働者募集圏」〈補論2〉「足尾銅山における囚人労働」、それに第3章「足尾銅山における労働条件の史的分析」を、ほぼ掲載し終えました。
   さらに、大原社会問題研究所関連の論稿を、第18巻 Ohara Institute for Social Research: People and Historyとして掲載することにし、まず「大原社会問題研究所を創った人びと」の英訳を公開しました。加えて、第19巻として『労働は神聖なり、結合は勢力なり ─ 高野房太郎とその時代』の英文版も掲載を開始しました。この Takano Fusataro and His Times は、いずれ活字本としても出したいと考えているのですが、まずはオンライン版で発表し、文章を練り上げようと考えた次第です。
  これらの英文論稿は、いずれも長年の友人である Terry Boardman が翻訳してくれたものです。テリーと最初に会ったのは1974年の秋のことでしたから、なんともう40年も昔のことになります。彼は神保町にあった会話学校の新任教師、私はそこの生徒でした。以来、私がイギリス留学中にテリーは近くのシェフィールド大学の大学院で日本語を学ぶという思いがけない出会いがあったり、その後、彼がICUの英語講師に就任した時には、私が推薦状を書くなど、さまざまな関わりが生まれました。ICUで働いている間に彼はルドルフ・シュタイナーとオイリュトミーを知り、その熱心な活動家になったのでした。現在はイギリスに住み、アントロポゾフィー(人智学)の立場から、歴史家として、また国際的な講演者として、活発に活動しています。彼の著作や講演の内容は、彼の個人サイト=Threeman.orgで詳しく知ることができます。
【2014年9月4日記】




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法政大学大原社研                  社会政策学会



 高野房太郎研究            比較労働史研究            鉱業労働史研究


  史料研究            大原研究所をめぐって            雑文集   



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【最終更新:

Written and Edited by
NIMURA, Kazuo

『二村一夫著作集』
The Writings of Kazuo Nimura
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